「知ってますか?認知症」

第1回 認知症の人が地域の人々とともに生きる地域をどうつくるか

公益社団法人認知症の人と家族の会副代表理事・神奈川県支部代表   

               川崎幸クリニック院長 杉山孝博

 私が認知症の人と家族の会にかかわって40年が経過しました。認知症に対する理解も支援も皆無であった40年前と較べると、現在は認知症の人および家族を取り巻く支援の輪は格段に充実してきました。

 その背景として、①認知症の人と家族の会などの当事者たちが実践を通して地道に社会にアピールしてきたこと ②2004年と2017年に京都国際会館で開催された国際アルツハイマー病協会国際会議(国際アルツハイマー病協会および認知症の人と家族の会主催)をきっかけとして、認知症の人本人が積極的に発言・行動するようになり、社会的な共感が得られたこと ③介護保険などのフォーマルな福祉サービスの充実や認知症サポーター養成などの社会的啓蒙活動が広がったこと ④「痴呆」から「認知症」に代わって受け入れやすくなったこと ⑤認知症治療薬の開発などを契機として医療の対象として認識されたこと、また認知症を診療する医療機関が各段に増えたこと ⑥そして何よりも認知症高齢者数700万人と言われるように、すべての人々が認知症を身近な問題としてとらえるようになったこと などをあげることができます。

にもかかわらず、認知症介護の大変さ・深刻さは、介護家族だけでなく、保健・医療・介護の専門職からも、行政職からも、地域住民からもいたるところで、マグマのように沸々と湧き上がっていると言えるかもしれません。

 その理由を考えると、①認知症の症状の理解が難しいこと(身体的な症状であれば経験的に理解できるが認知症の症状の理解はむずかしい) ②暴言・暴力・不穏・物盗られ妄想などのBPSDへの対応が困難であり、しかも医療・介護サービスの利用を断られること ③認知症の症状に対する医療的対応があまり有効でないこと ④発症から終末期まで介護の期間が長いこと ⑤一人暮らし、老々介護、認認介護、ヤングケアラーなど介護状況の厳しい現実があること ⑥多彩で、次々に変化する認知症の症状に対する適切な介護方法が確立していないこと ⑦医療と介護の問題に限らず、就労、経済的問題、遺伝、子供の養育・結婚、介護サービスの量的・質的不足などさまざまな問題をもっている若年性認知症の取り組みが不十分であること ⑧認知症の人が生活する地域においてその理解や寛容性がまだ脆弱であること などでしょうか。

 さて、本分科会のテーマである、「地域づくり」を考えてみたいと思います。

 基本は、認知症の正しい理解を深め偏見を除去すること、および認知症の人や家族が適切な介護を受けられ介護できる環境を一層整備することの2点です。

認知症の人は様々な能力を持ち、喜怒哀楽の感情をもち、周囲の人との交流を求めている人です。認知症と診断されたら「全て終わり!」ではありません。そのためには、地域住民が認知症の人やと家族と接する場をたくさん持つことが前提です。認知症カフェや「run伴」、本人家族交流会などの自発的な活動の場が広がっていくことが期待されます。

BPSDのため介護サービス利用ができなくなり最も困難な介護を家族に押し付けている現状があります。「介護地獄」とも称される状況が変わらない限り、認知症の人の地域生活はあり得ないと思います。難しい介護こそ専門職が引き受けるという、職業倫理に裏打ちされた専門職の奮起を期待したいと思います。

(2021年9月1日・2日に開催されたさわやか福祉財団主催「いきがい・助け合いサミットin神奈川」の分科会「認知症の人が地域の人々とともに生きる地域をどうつくるか」における杉山の発言要旨)

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